コラム

販売計画の精度問題

2021/07/15

販売計画とは、どんなお客様に、どの商品/サービスを、どのような方法で販売するのかを決めるもので、多くの企業では、営業担当ごとに得意先との商談や過去の実績をもとに策定いたします。

ただ、営業担当ごとに計画するため、「目標達成をしているように見せ、後で修正をしていこう」としたり、「実績と乖離すると怒られるから、素直に報告しよう」とする方など、担当者によって大きく変わってしまいます。
この販売計画の精度を疎かにすることで、生産部門・仕入部門・物流部門・経営層と会社全体への影響を与えることになり、最悪な場合、信用低下により取引中止につながるリスクも潜んでいます。 また製造業でよく言われる、「必要最低限の在庫で、得意先の要望に応える」、これを実現するためには、販売計画の精度向上が必要不可欠になります。

ここでは販売計画の精度問題について、もう少し詳細にお伝えします。
 

販売計画に関わる影響範囲とは?

上述した通り、販売計画は会社全体へ様々な影響を及ぼすため、まずは各部門ごとにもう少し詳細にお伝えいたします。

1.生産部門

販売計画の精度が低いからあてにしていないとお話される企業は少なくありません。 その場合、過去の実績や在庫量、トレンドなどをもとに生産担当が勘や経験による独自の方法で生産計画を立案しているケースが多く、この作業自体が属人化に向かいやすい傾向にあります。 属人化してしまうと、担当者を変更したくても変更が困難となり、仮に退職となった場合には会社全体に大きな影響を及ぼしかねません。
また、勘や経験をもとにした計画では、在庫過多/欠品の原因となり利益減につながるリスクが高まります。 適切な在庫の確保ができなくなることにより、販売機会の損失にもつながりやすくなり、そのカバーをするために、無理な残業や人海戦術でなんとか対応しているケースも伺います。

2.仕入部門

仕入計画は、生産計画や販売計画のどちらか、もしくは両方をもとに作成されることが多く、販売計画の精度が粗いと仕入計画にも影響を及ぼします。 例えば、原料や資材の過剰在庫の原因を紐解くと、実は販売計画が実績と大きく乖離していることが原因だったりします。 どこの部門でも欠品は避けたいため、販売計画があてにならないと「計画の+α」で発注をしてしまい、これが過剰在庫の原因となっていたりします。
定量的に出荷する製品であればロスには繋がりにくいですが、稀に出荷する製品の場合はロスに直結してしまうので特に気を付ける必要があります。

3.物流部門

株式会社日立ソリューションズ東日本社、株式会社ジェムコ日本経営社の調査によると在庫に関するオペレーション面での課題は何かという質問に対しては、「在庫過多」との回答がもっとも多く、在庫過多の最大の要因として「販売計画精度の低さ」との回答が36.2%となりました。(回答総数:260名)
物流部門で、いかに適正在庫での管理を行おうとしても、生産部門や仕入部門が販売計画ありきで対応を進めようとしても基となる販売計画の精度が粗いことにより、各部門が独自の方法で対応をしてしまい、結果、在庫過多を引き起こしてしまいます。 在庫過多になってしまうと、賞味期限切れや倉庫のキャパシティなどの問題のため本当は保管しておくべき製品、原料であってもやむを得ず処分するしかない状況にも繋がりかねます。

4.経営層

営業担当者は、お客さまと商談し、受注を確約することが当然メインの業務であり、商談情報を社内に共有することは二の次になることもあります。ベテランになればなるほどなおさら。
このことが突発の計画変更につながり、計画変更が製造においてどのくらい大きいインパクトを与えているかまで考えることはあっても、細かくは知ろうとしません。 なぜなら営業としては仕事を十分に果たしているからです。  

販売計画の課題・改善方法

ここまで各部門に与える影響をお伝えしましたが、では、なぜ販売計画の精度は粗くなってしまうのか? 販売計画の作成の課題として、よくお聞きするのは、「商品数、得意先数が多くて管理しきれない」「社内共有が煩雑なため手間がかかる」などが挙げられます。 このような、販売計画作成における課題としっかりと向き合い、解決方法を検討する必要があります。

・商品数、得意先数が多くて管理しきれない

多くの企業では、自社商品をSKU単位でみると100種類以上あり、営業担当は一人で数十社以上の対応をしています。 会社としては、正確な情報を把握するためにも得意先別に商品単位での管理を求めるケースが多いですが、この管理方法では営業への負担がとても高く、主業務にも影響が出てしまうため、営業担当によっては昨年実績をそのまま計画にしたり、昨年の販売計画を年度のみ変更して利用したりします。
このように、細かな情報を求めるがために、営業担当の負担が高まり販売計画が粗くなってしまうケースはよくお聞きします。 例えば、得意先別の管理を取止めたり、商品群単位での計画作成にするだけでも負担の軽減となり、正確な販売計画の共有に繋がりやすくなります。

・社内への共有方法の煩雑さ

営業担当から共有される販売計画がいかに正確であっても、管理する側の負担が高まるとどこかに歪がうまれてしまいます。 よく聞く共有方法としては、システム管理、メール、FAX、電話や対面で口頭伝達、社内の取り決めなくこれらすべてで共有している企業は少なくなく、また、営業担当や拠点ごとに管理フォーマットや計画の立て方がバラバラで管理している場合もあります。
共有方法が定まっていないことで、いかに正確な情報をスピーディーに共有をしても管理をする際に抜け漏れおこしてしまったり、また営業担当も伝え忘れてしまうなどの危険があります。
特に、電話や対面での口頭での伝達は、記録が残らないため「言った/言わない」問題にも繋がるので、管理者の負担軽減、営業担当の伝え忘れの軽減をするためにも管理方法の統一化は必要になります。

・その他の改善方法

上記課題の解決方法以外にも、販売計画の精度向上に繋がる対策としては、「お客様を把握した」中長期的な販売計画の立案です。
例えば、過去の商談履歴、販売実績をもとに「得意先ごとの例年の特売時期の把握」や「得意先の購買プロセス」を把握することが重要です。 例年の傾向を抑えることで、販売推移の波を把握しやすくなり、購買時の検討期間や急な発注をしてくるかなどの得意先の購買プロセスを抑えることで、急な受注をある程度防ぐことができます。
また、すべての営業担当にコスト意識向上を目的とした教育として、上述しました販売計画に関わる影響範囲をお伝えし、販売計画の精度による会社全体への影響コストを意識づけ、1人ひとりがコスト意識を持つ風土形成をすることが重要です。

まとめ

販売計画は営業担当「個人」のものではなく、会社全体に影響を及ぼす情報であるため、いかに正確な情報をリアルタイムに共有できるのかが重要となり、もし、情報共有が遅れてしまう、誤った情報を共有してしまうと、売上は増えたとしても他部門へのしわ寄せがおこり、結果的には会社の利益減に繋がってしまいます。 そのため、販売計画の精度向上を促すためにも共有/管理方法の統一や運用の見直し、会社全体でのコスト意識の徹底の取り組みが必要になります。
「需っ給さん」では、部門横断的で需給バランスの可視化や、販売計画と実績の乖離状況の把握など、需給調整の精度向上を支援します。




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例:需給調整

筆者:幸田

2015年入社
営業担当
パッケージ商品のご提案からフルスクラッチのご提案まで幅広く対応。
昨年第一子が誕生。子育てに奮闘中。