コラム

需給調整とは

2021/06/30

食品メーカーさんの製販調整(製販調整)を行う業務部門、管理部門の方とお話しすると共通して言われることがあります。
“うちは特殊だから”、“属人化しちゃってて、職人技なんだよね”、“販売見込みが信用できない”
これらは果たして、本当に解決不可能な問題なのでしょうか?

需給調整とは

需給調整とは、販売見込み情報、在庫情報、生産のキャパシティ、食品の場合はさらに賞味期限を加味して、最適なバランスを保つ(需給計画を作る)仕事です。

営業部門、物流部門(倉庫)、生産部門から情報をかき集めてそれらを分析し、最適な在庫量を予測、製造依頼(生産計画の元)を作成します。
一度作成した製造依頼も、突発の受注・失注によって組み替えが発生しますし、極端な例ですが、とあるインフルエンサーが「この商品使ってます」とメディアで公表すれば、
翌日(場合によっては当日)からの需給計画は組み換えどころか真っさらから練り直しとなります。

予測できない需要は仕方ないとしても、在庫の「欠品」や「破棄」が起きないよう。
あらゆる状況に対応するべくシミュレーションこそ命の業務といって良いでしょう。

需給調整には、営業部門、生産部門、需給調整担当が主にかかわります。

需給調整担当の業務内容とは

需給計画の作成にあたり、製販調整会議の主催を行います。
関係部門(営業、生産、倉庫、仕入れなど)に連絡し、いついつどこで開催するかの連絡や、その準備を行います。
会議の司会はもちろん、どこにも情報化されていない会議で初めて知る情報もデータ化し、今後の需給計画に活かします。

また、営業担当者への納期回答も重要な業務のひとつです。
営業担当者にとって自分のお客さんに予定通り納品されるかは今後の取引継続にかかわる重要な要素なので、
需給担当者は営業担当者から逐次確認される納品日についても即座に返答する必要があります。
営業担当者はお客さま先から目の前にお客さまがいる状況で電話をかけてくることもあり、携帯電話を手放せない仕事でもあります。

管理には表計算ソフトが使用されていることが多くみられます。

よくある課題

需給調整業務ではこんな課題が多く聞かれます。

1. 属人化

需給調整はそもそも多くの人数で行う仕事ではなく、ある程度社歴を重ねた社員が勘や経験から導き出す需給計画の作成がメインであり、そのメイン業務はむしろ1名であるほうが都合が良い場合があります。
会社からしてみると、これほどありがたい状況はありません。なぜなら、”職人技”、”属人化”であろうともその1人の需給担当者さえいれば、すべての部門の業務が止まることはないからです。
しかし、管理に使われることの多い表計算ソフトは、ベテラン社員が長い年月をかけて複雑な計算式が張り巡らされた大作となっていること、さらに、1人しかいない需給担当者にもしものことがあったときのリスクは常に付きまといます。

2. 情報共有の難しさ

また、当然、各部門は自らの業務を全うするべく、他部門を気にかけている余裕はありません。
営業部門は製造キャパシティについて深く知りませんので、A商品の製造を急がせた場合、B商品が製造できなくなることにまで考えは及びません。
生産部門はどのような商談が行われているか、どの商品がどのお客さまに届き、今後どう発展するかまでを予測することはできません。
各部門では、自分たちが最も良いやり方で情報を管理し、その情報は部門を横断して共有されることはありません。

3. 販売見込みの精度

営業担当者は、お客さまと商談し、受注を確約することが当然メインの業務であり、商談情報を社内に共有することは二の次になることもあります。ベテランになればなるほどなおさら。このことが突発の計画変更につながり、計画変更が製造においてどのくらい大きいインパクトを与えているかまで考えることはあっても、細かくは知ろうとしません。
なぜなら営業としては仕事を十分に果たしているからです。


それでは、どのような解決策が考えられるでしょうか?
システムを利用した解決策をご紹介します。

解決策

1. ベテラン作成の表計算ソフトからの脱却

表計算ソフトほど汎用性に優れていて、誰もが使えるツールはありません。それゆえに複雑な計算式や他のファイルへのリンク設定がされていたり作成者しか理解できない、難解なBookが出来上がります。作成した人は自分が使う目的で作っていますので、親切なコメントやマニュアルは用意されていません。
他者がうかつに不要な箇所を変更すると、たちまち壊れてしまうこともありえます。
これは、需給調整業務の特性上、1名のベテラン社員で成り立つがゆえに、起こるべくして起こる問題です。

需給調整業務において、定期的に行われる作業を自動化し、人間判断が必要な作業だけを抽出できるかがカギになり、人間判断作業は会社によって違いは多くありません。
例えば、基幹システムで管理されている在庫情報や商品マスタは直接参照するか、需給担当者に自動で連携されることで手作業はなくなります。
一方、突発の販売見込み変更が発生し、製造依頼を変更するといったイレギュラー対応は人間判断でと決めます。

まずは需給担当者のフローを洗い出して図に起こし分析した結果、自動化できるポイントを抽出します。
そして新たなフローを起こす際、表計算ソフトではなく、シンプルな画面や手順にこだわっているシステムを選ぶことが重要です。
需給調整は社内を横断したデータを扱う業務なので、シンプルであればあるほど、誰でも需給調整ができるようになるといえるでしょう。

2. 異常値を瞬時に把握できる仕組み

「注目してる商品はいいんだよ、注目してない定番品で欠品するのが怖い」という話を伺ったことがあります。
通常であれば予測通りの出荷が続いている商品も、特売などで突然大きな出荷が起こることがあります。
突発の特売の情報を営業担当者が需給担当者につぶさに連絡できるかというとそうでもありません。

営業担当者のもつ特売情報が自動的に需給担当者に通知される仕組みの有無は、機会損失防止に重要な役割を担います。
また、今は欠品しなくても、数日後に欠品する商品のみをピックアップするには、自動的に情報が共有化されることが重要です。
表計算ソフトからシステムに切り替える場合、アラートの自動検知の仕組みが備わっているかは必ず確認してください。
そして、複数の商品の需給計画を一度に確認でき、速やかに変更できる仕組みを有していることも重要です。


3. 販売見込みをリアルタイムに共有

生産部門は「販売見込みは日々動く」前提で、生産計画の変更に柔軟に対応できる意識を持つことと、販売見込み情報が実は伝わってなかったという避けられる遅延を引き起こさない仕組みであることを確認してください。

営業担当者が商談後にぐに入力した商談結果がリアルタイムに需給担当者や生産部門にシェアされるか否かは需給調整の早期対応に直結します。

余談

実際に「需っ給さん」を導入いただいたとある食品メーカー様では、優秀なベテラン社員が1名で需給調整を行っていました。
「需っ給さん」導入後、半年ほどしたある日、突然その方が事故にあい、数か月出勤できなくなりました。
今までであれば、需給調整はその方の表計算ソフト(計算式が入り組んだ)がなければ成り立たず、在庫「欠品」や「破棄」が多発していたはずです。
それでも大きな損失が出なかったのは、「需っ給さん」で社内共有、複数人での運用が習慣化されていたからだったとのこと。
手放しに喜べる話ではありませんが、需給調整業務が標準化された事例としてシステム会社冥利に尽きるお言葉でした。


導入事例詳細



キーワードを入れると、需っ給さんサイト内から検索できます。
例:需給調整

筆者:安立

2004年入社
SEを経て営業チームを発足。SE時代の知見・経験を活かした提案で多くの企業の業務課題を解決。
中日ドラゴンズファン